1938年12月11日フランスの植民地下のアルジェリア・
コンスタンチーヌに生まれたユダヤ人で、アルジェリアの
独立戦争によって本国フランスに「帰還」したピエ・ノワールと
呼ばれる移住者の一人です。
マシアスは、はじめそのピエ・ノワールに支持され、次第に
ファン層を広げ、フランスはもとより、日本を含め世界中で
人気を得ますが、その歌には、故国アルジェリアや、
移住を余儀なくされたことを題材にしたものも少なくなく、
その陰影を含んだ音楽は心にしみます。
「ユダヤ、それは私の宗教で、あらぶ、それは私の文明です。
私は自分のことを”ベルベル系ユダヤ人、アンダルシア系
ユダヤ人と規定します。」
「生まれ育った生家は4階建ての小さな建物で、ユダヤ教徒、
イスラム教徒、キリスト教徒の家族が同じ屋根を分かち
合っていました。
それは幸福の家であり、相互理解と友情の家でした。」
日本では1965年、越路吹雪さんが、アルジェリア解放闘争の
中で生まれたといわれているエンリコ・マシアスの「恋ごころ」
を岩谷時子の訳詞、夫の内藤法美の編曲で歌い、ヒットさせます。
これはオペラの世界からシャンソン歌手に転向した岸洋子も
歌って、こちらも大ヒットとなりました。
フランスから独立しようとしたアルジェリアでしたが、
フランスが徹底的に弾圧して、解放闘争は苦難をきわめました。
しかし、国を自分たちのものに取り戻そうという気持ちは、
いくら弾圧されても、どこからか燃え上がってきます。
こんな気持ちをエンリコ・マシアスが歌ったのです。
硬い政治の言葉ではなく、「恋は不思議ね 消えたはずの
灰の中からなぜに燃える…」と歌ったのです。
「想い出のソレンツァラ(Solenzara)」
作詞:エンリコ・マシアス
作曲:ドミニク・マルフィジ&カテリーネ・ダルバル&
ブルーノ・バカーラ
コルシカ島の歌に基づいて作られ、1962年に出版されました。
ソレンツァラの浜辺での夏の夜の恋の思い出をうたったもので、
「恋心」とともにエンリコ・マシアスの人気曲として知られて
います。
ソレンツァラは、ナポレオン生地・コルシカ島の東海岸にある
美しい保養地です。
イタリア・ジェノヴァ領になっていた時代もありましたが、
現在はフランス領です。
1995年オリンピアでのコンサートからの映像です。
メドレーの2曲目に「Solenzara」が歌われています。
ちなみに「ジプシー・キングス」の前身である
「ロス・レイエス」を初めてオランピア劇場の舞台に
登場させたのは彼です。